すっと終われる人ともがき苦しむ人がいる。
そして終わった時から新しい一歩が始まる。

63歳定年の夫は出向先の役員だった。
そしてその最後の日だけは黒塗りの車で家まで送られる。
出世街道ならそれが日常だったはずだ。
あと二年は嘱託として窓際で残ることもできたけれどプライドが許さなかった。
ちょっと映画も気になっている。


家人は57歳で早期退職した。
再雇用の話もあったけれど再就職先の三時までの仕事にすっとシフトできた。
子供たちも大学を卒業し両親も看取りそこにたどり着いたのだろう。
揺るがずに終われたのは立派だった。

わたしは節約が苦手だ。
節約するなら働く。
こうでなければと決めることも決められることも苦手。
まあいいかと穏やかに暮らしたい。
家人にはそれがない。
独自の節約や規則が生きがいになっている。
趣味のサークルに居場所もみつけた。
それでもわたしが働いて好きなことをするのには何も言わない。
最近はそれがどんなにありがたいことかがわかってきた。

終わった夫婦も終わった仕事も悪くはない。
必要としてくれる時がきたらまた寄り添いたい。
それまでは上手にすれ違いができれば十分。
その時初めてお互いの痛みを知ることになるだろう。

雨に濡れた紫陽花がきれいだ。
義父が愛でた花が今年も咲いた。
tn