美しい距離って難しい。
どちらかというとべたべた過ぎるのは苦手。
近すぎず離れすぎず黙って見守ることを肝に銘じている。
ただしお願いと言われればすぐに駆けつける。
それがわたしの美しい距離。

山崎ナオコーラさんは父親の介護と育児を経験してこんなステキな本を書いた。
40代の妻にある日癌が見つかった夫は職場に時短勤務を申請する。
(男性が介護や育児で三ヶ月間の休みや時短を取れるようになったのはすごくいいことだと思う。
ただしそれは権利ではなくその分を誰かがフォローしていることも自覚して素直な気持ちが伝われば反対に頑張ってとおせっかいすらやきたくなる。)
病院に行くとそこには妻の母もきていて「ありがとうございます。」とお礼を言われる。
親が子供を心配するのは当たり前だけど夫が妻を心配するのも当たり前なのにと素直に受け止めれない。
もしわたしが婿さんにお礼を言われたらこちらこそありがとうと言おう。
ちょっと他人行儀な関係こそ美しい距離なのかもとナオコーラさんに教えられた。

介護は長丁場だから逃げることなく淡々とが大事なような気がする。
こちらがよかれと頑張っても病人には病人の気持ちがあるし認知になれば病気の自覚がないから治療も苦痛でしかない場合もある。
家に帰りたいと病床で暴れる義父を家に連れて帰ったけれど家に帰りたいともっと混乱した。
義父にとっての家は現実の家ではなく家にこだわっていたのは私の方だったと思った。
「そうね。もうちょっとしたら一緒に帰ろうね。」とだけ言い続ければよかった。
そして血の繋がりのない嫁は義父母が滞りなく旅立てばその瞬間に蚊帳の外におかれるのを知った。

八十代半ばの両親の介護がこれから待っている。
それが終わるまで心身ともに健康な娘でいたい。
美しい距離」で。