book723
「この世界にアイは存在しません」
アイはアメリカ人の父と日本人の母の養女。
シリアで生まれたという。
いつからか人災や天災で亡くなった人の数をノートに書き続けてきた。
たまたま養女になったけれどもしかしたらそちら側の人間だったかもしれない。
この世界に存在しなかったかもしれないと思い続けてきた。

血の繋がりで生きてきたわたし。
祖父母がいて両親がいて兄弟がいて子供がいて孫がいる。
そのファミリーツリーの中で守られてきた。
でもそれはたまたまの出会いの連続でもある。

アイの気持ちがひりひりと伝わってくる。
9.0の地震にひとりで見舞われたとき初めてノートの数ではなくその恐怖に存在する側として身体で受け止めた。
この世界にわたしは存在すると。

iとは想像上の数だそうだ。
想像されることで存在することに魅せられた。
大切で大好きという感情は曖昧だ。
だからこそ想像し続けていたい。