戦後七十年。
原子爆弾投下の三時間後の御幸橋で撮られた二枚の写真。
その写真が動き出した。
写っていたのはセーラー服にもんぺの13歳の少女の背中。
欄干に腰掛ける二十歳の青年。
そのご本人が写真と向き合い語る広島弁の言葉が胸に深くしみる。
「忘れられんですよ。
死ぬるまでもっていくんでしょうね。
わたしはどうして助かったんですかね。
分からんですがね。」
「何でもとにかく人間の命が一番大事。
その命を取り合う戦争なんてもってのほか。」
爆心地から友達を置き去りにして瀕死の状態で逃れてきた橋は生と死の境界線だった。
いつかその場所にある写真をきちんと見てこよう。

再稼動ありきの原発、基地移転ありきの沖縄。
昨日街頭スピーカーでは大声で怒声に罵声を繰り返していた。
耳を傾け真摯に受け止めるべきなのは家族を友を救えなかった小さな悔いた声だ。



野火を観た。
ビクッと驚かされる大音量に映像。
うわっと目を覆いたくなる壮絶なシーンが続く。
塚本版地獄の黙示録は狂気の命の奪い合いだった。
観るべき映画ではあるけれど今はどーんと打ちのめされている。
拒否反応こそが監督のねらい。
文豪の原作を読んだらどう感じるだろう。

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