戦後七十年。
原子爆弾投下の三時間後の御幸橋で撮られた二枚の写真。
その写真が動き出した。
写っていたのはセーラー服にもんぺの13歳の少女の背中。
欄干に腰掛ける二十歳の青年。
そのご本人が写真と向き合い語る広島弁の言葉が胸に深くしみる。
「忘れられんですよ。
死ぬるまでもっていくんでしょうね。
わたしはどうして助かったんですかね。
分からんですがね。」
「何でもとにかく人間の命が一番大事。
その命を取り合う戦争なんてもってのほか。」
爆心地から友達を置き去りにして瀕死の状態で逃れてきた橋は生と死の境界線だった。
いつかその場所にある写真をきちんと見てこよう。
再稼動ありきの原発、基地移転ありきの沖縄。
昨日街頭スピーカーでは大声で怒声に罵声を繰り返していた。
耳を傾け真摯に受け止めるべきなのは家族を友を救えなかった小さな悔いた声だ。
野火を観た。
ビクッと驚かされる大音量に映像。
うわっと目を覆いたくなる壮絶なシーンが続く。
塚本版地獄の黙示録は狂気の命の奪い合いだった。
観るべき映画ではあるけれど今はどーんと打ちのめされている。
拒否反応こそが監督のねらい。
文豪の原作を読んだらどう感じるだろう。
コメント一覧 (7)
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- 2015年08月11日 07:54
- なもさんおはようございます。
この国の空はレディースデイに見るつもりでいます。戦後70年、テレビも映画もとても気になります。
そして「繰り返しません。」と小さな声でつぶやきます。
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- 2015年08月16日 08:47
- ご無沙汰しております。
塚本版『野火』は進富座には来ません。
『六月の蛇』も『ヴィタール』もひどい入りでしたので、『鉄男(新しい方)』を最後にやめたそうです。
話題作になりましたね。なもさんオススメの荒井晴彦監督の新作も、マイミクさんが絶賛をしてました。
『あん』もやっと公開されました。本来はスポンサーがテレビ局なので、シネコン上映になるところを河瀬監督が進富座上映を望んだようです。舞台挨拶と共に伊勢にやってきました。すてきな撮影の裏話もされてました。
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- 2015年08月16日 13:58
- ほねひい様。
河瀬監督のお話を直に聴かれたのですか⁈ 羨ましいです。
『野火』
観られないんですね。
まりりんさんが言われる様に、今 観ておく映画だと私も思います。
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- 2015年08月17日 14:13
- ほねひいさん、すごいご無沙汰です。
お元気でしたか。
野火すごい映画でした。
そしてやっと立ち直りました。
河瀬監督に望まれる進富座。
いいな~。
にゃーちゃん、じわじわと観てよかったと胸を張れるようになりました。
あ~観たい映画が目白押し、それだけでうんと幸せだ。
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- 2015年08月19日 13:37
- 河瀬監督のお話は、ラスト近くの善哉を食べるシーンで、シナリオには何も書いてなかったのですが、永瀬正敏の様子がおかしいのです。監督はカメラマンに永瀬への長回しを指示。涙を流した永瀬、監督は樹木希林の耳元で「うれしい時は笑うのよ」といってくださいという。すると希林さんは「美味しいときは、笑うのよ」といった。アドリブでできたこのシーン、監督がOKを出しても誰も動かなかった。スタッフもみんな涙を流していた、ということでした。
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- 2015年08月20日 10:38
- ほねひい~
ぜんさいって善哉なんだ。
夫婦善哉もそこからきてるのかな。
ぜんざいよりもおしるこ派のわたし。
だから赤福派でもある。
「美味しいときは笑うのよ。」
うれし泣きの顔がもう一度みてみたいです。
原作を読んでからの映画。
シンプルでとってもよかったです。
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まりりん
まーちゃん
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少しよこしまな期待もありましたが、そういう場面はほんのわずかで、殆どは清謐な音楽の中で淡々と流れていきます。二階堂ふみ さんでしたか、少女役の女優さんの大人びた語りが印象的でした。