名門中学二年のぼくは授業中に突然呼び出される。
単身赴任中の父親が横領で逮捕されたという。
しかも愛人名義でマンションを買っていたらしい。

その日から家も財産も退学で友達も失い借金を返すために母親は住み込みで介護の仕事をし、ぼくは中学の三年間だけを対象にした養護施設を運営する母親の姉であるおばさんに預けられる。
養護施設には訳ありな子供しかいない。

「人と人はお互い何もかも知らなくてもつきあっていけるのだし、だからこそ、いつかすべてを知っても、それまでと変わりなくつきあい続けられるのだ。」

中学の三年間で学ぶことは多い。
子供と大人の狭間で勉強以上に世間は理不尽で平等ではないことを学ぶのだ。
繊細でたくましい少年はぼくからおれになる。

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わたしにはおれのおばさんに当たる甥っ子が二人いる。
一人はこの春大学を卒業して社会人になりこの一年は研修中。
もう一人は卒業後アメリカに行き帰国してバイトをしながら人生模索中のようだ。
お年玉をあげなくなっておばさんの役目はなくなったけれど心の片隅では気にかけている。
精一杯やっていれば不思議なことに土壇場になれば次の道筋が見えてくる。
そして戦わないおばさんは何事も無理をせずほどほどに楽しんでいよう。