「いってらっしゃい。気をつけてね。」
三人の子供たちにももちろん赴任先に戻ってしまう家人にもそう言い続けてきた。
そして最近の出勤時間の差は五分。
その五分差があるから言えるんだと思ったら悪くないじゃんと気がついた。
反対はどうも落ち着かない。

企業戦士だった時は絶対に喧嘩しないと決めていた。
いってらっしゃいと送り出してもその日に帰ってはこない。
一週間先になるか一ヶ月後か帰宅前日の連絡があればいい方だった。
船乗りの妻かとも思ったけれどそうか自衛官の妻もなんだとテレビを見ながら思った。

最近やっと言い合いができるようになったのは毎日帰ってくるから。
それでも嫌な気分になるだけならもうやめようかと諦めかけていた。
世の中には肯定する思考の人と否定する思考の人がいるらしいのだ。
「そうなんだ。」ではなく「それはおかしい。」と言われてもすべてを否定しているわけではない。
その証拠に少しづつわたし路線に傾いている。

とびきりの笑顔はひきつるから無理だけどこれからも言おう。
「いってらっしゃい。」と。
そして先に帰ってきている家人の言おう。
「お疲れ様。」と。