悪人は朝日新聞の夕刊で連載されていたそうだ。
そこには束芋ちゃんの挿絵がある。
グロテスクな絵やフレーズを眺めていると映像やストーリーが蘇る。

道徳やモラルではなく大切な人がいるかどうかだけを問うている。

人を殺めることは許されない。
それと同じぐらい大切な人を無言で想い続けている傷ついた人を追い回すマスコミやそれをしったかぶりに噂話の種にする一視聴者であるわたしの心を揺さぶる。

人はどんな事件も他人事のように忘れていく。
ただ自分の身に振りかぶり傷ついたことだけはかさぶたのように時々痛みを感じるとわかっていてもめくらずにはいられない。
そして少しでも忘れるためには自分を肯定し無理せずに流れに身を任せるしかない。

束芋ちゃんの物語絵巻にはエロチックでとんがったやさしさがある。

起承転結の起と結しか他人にはわからないから短絡的にみえても言葉では説明できない承と転だけが繰りかえし訪れる。
そしてやさしい隣人はそっと言葉を投げかける。
「しっかりせんといかんよ。」

「・・・でもさ、どっちも被害者にはなれんたい。」
その心の闇が晴れることがあればと願わずにはいられない。


息子からお米とクイックルワイパーのシートを送ってほしいとメールが届いた。
母は悪人の文庫を宅急便の箱の中に入れた。
そして姉たちはじゃあこれも入れてとお菓子やボディーシャンプーを買ってきた。
遠く離れていてもそれぞれ楽しく頑張っているのがさりげなく伝わればいい。