スクリーンには何も映らない。
いとうたかおのBOYが流れる。

地下街を歩くと今どこにいるのかわからなくなる。
地上に出てみる。
太陽の光がまぶしい。
目が慣れるまで立ち止まり行くべき方向に歩き出す。

この映画はBOYがあったからこその物語。


母子家庭の高校生。
母親が病気になってしまえば収入は絶たれる。
社会と接点がないわけではない。
現状を知っているのに病院も高校も誰も知恵を教えないのが不思議だった。
(母子家庭なら医療費はいらないし、公立高校なら授業料は免除だ。
電気も水道も止められるほどなら生活保護を申請することも出来るかもしれない。)
揺さぶられながらもわたしは現実的だ。


少年を誰も責めることはできない。
愚痴をこぼすこともなく精一杯生きているのだ。
ワカラナイことをワカラナイと言えない貧困が哀しかった。
白昼夢の中でしか抱きしめてもらえない孤独が哀しかった。

それぞれに事情がある。
頼る人には頼る人の。
頼られる人にも頼られる人の・・・。