「下りるために登るんさ・・・。」
その言葉を残して植物人間になった同僚。

男にとって下りるってどういう意味だろう。
若者の鬱が増えているという。
正社員の負担は大きい。
派遣を増やしたことで入社早々責任をもたされる。
以前は午前様があたりまえでもみんなでそれを乗り越える社風があった。
今は誰かにそれをおっかぶせて知らんふりを決め込み、上手に立ち回る人が生き残る。
家族がいればそこから逃げ出すことは家庭崩壊につながると自分を追い込んでしまう。
下りたくても下りれない。
団塊の世代一歩手前は違う意味で苦しい状況にある。
終身雇用は昔の話、会社を存続させるために人件費削減を無言で責められている。
天下りとは無縁のサラリーマンは下りてしまえば今まで培ったものを生かせる場所がないこともわかっている。
仕事を生きがいにして家庭を育み趣味を楽しむ当たり前の人生が今は一番難しい。

毎朝新聞に目を通すが、実家に行くと違う新聞をとっているのでその違いに驚くことがある。
どこかニアンスが違うのだ。
正論ばかりでは根底に流れる人に向けるまなざしが違う。
それに洗脳されれば価値観自体違ってくるだろう。

情報を正確に迅速に公平に伝えることの難しさをこの本で知ることが出来る。
群馬県の地方紙。
かつては大久保事件や連合赤軍事件があったところ。
そこに御巣鷹山の日航機事故が起きる。

連日のように報道されるその裏側にも目立たない忘れられた事故はある。
でも遺族にとっては命の重さは変わらない。

どの命も等価だと口先で言いつつ、メディアが人を選別し、等級化し、命の重さ軽さを決めつけ、その価値観を世の中に押し付けてきた。

新聞記者だった著者だからこそ書けた本だ。

夫婦だからわかりあえること。
夫婦であっても永久にわかりあえないこと。
その境界線に立たされている気がして・・・。


転んでも傷ついてもクライマーズ・ハイのように登っても下りても、わたしは今まで同様ついていくだけだ。

横山秀夫 著