本を読むとわたしは勝手に物語や思い出がはじまってしまう・・・。

二年前お友達と奈良を旅した。
彼女が立ててくれたスケジュールにわたしはのっかる。
彼女との旅はいつもそう。
一緒に並んで歩いたり狭い道では彼女の背中を見ながら歩き回る。

彼女はよく知っている。
仏さまを見るときもそこにあるべきものに再会しているみたいだ。
時間をかけて対話している。

わたしはといえばとりあえずすべてをみて出口でまでくるともういちど別れを惜しむように逆戻り。
わたしが気になった仏様はけっして有名というのではない。
しゃがんだり斜めから見ているわたしを待っていてくれる。

同じ場所にいっても彼女のペースをくずしたくないしわたしもわたしのペースで見たい。
そんな彼女との旅は心地いい。

彼女と見た奈良の月を思い出した。
まひるの月だった。
カメラに撮ると思っていたよりも月は小さいし、感動は伝わらない。
でも確かに大きく存在感があったのだ。
まひるの月は太陽との共演。
出くわすといいことがあるんじゃないかといつも勝手に思う。


この本はサスペンスロードムービー。
旅の始まりの明日香の橘寺にはまだ行ったことがない。

畦道と一体化した遊歩道が続く。
明日香は子宮の中の羊水のようだ。
閉塞感はあるけれど、なぜか落ち着く。
誰かが空から見下ろしていて、大きな掌を広げて守ってくれているような気がする。


高松塚古墳がマスコミに取り上げられたのはずいぶん前のこと。
亀石に触れることはできるだろうか。
山辺の道も歩いてみたい。

奈良は聖徳太子の時代から過去と現在が整然と同居している。
人が少ないのも好きだ。

わたしは恩田陸をずっと男だと思っていたことがある。
ねっとりしていなくて淡々としていたからだ。
それでも時々女の機微を感じて不思議だった。
この本はそれが凝縮されている。

一人の男をめぐって恋人と親友と妹とそしてもうひとりの女が絡む。
好きになるのに理由はいらないけれど別れるには理由を探す。
盲目的に信じていたからこそ乗り越えたようで傷は深い。
それでも日常を一人で歩き出さなくては前には進めない。