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9・11のソーホー、あの日逃げ惑う群衆の中平然と絵を描き続けていた一人の老画家がいた。
路上で暮らす日系アメリカ人、ジミー・ツトム・ミリキタニ(三力谷)のドキュメンタリー映画。

アメリカで生まれヒロシマで少年時代を過ごし、戦うことを拒否しふたたびアメリカの土を踏む。
でもそこでまっていたのはアメリカの国籍を持ちながらも強制収容所に入れられ市民権を捨てる。

彼は絵を売るホームレス。
強制収容所で原爆で亡くなった人たちへの思いが断ち切れずに彼はたった一人で怒り闘い続けてきた。

その気持ちを癒したのはこのドキュメンタリー映画監督であるリンダ。
奇妙な共同生活。
リンダは社会保障を得るために奔走しそして離れ離れになった姉を探しあてる。
そして彼は帰宅の遅いリンダを孫のように心配する。
アメリカ人は自分の事しか考えていないようにいわれるけれど、行政も隣人もみんな温かくおせっかいだ。
「絵の先生をしてみない?」
いつのまにかアメリカの施しはうけないと頑なだった気持ちを変えていく。

国を相手にしたドキュメンタリー映画もあるけれど私はたった一人の孤高の画家に目を向けたこの「ミリキタニの猫」に最初から胸がしめつけられっぱなしだった。
亀仙人のような老画家は大好きな猫を描き続けながら今日も平和を祈り飄々と暮らしているにちがいない。