妊娠中どんな気持ちだったか思い出す本を読んだ。
つわりはひどかったけれど体も心も満たされていた。
いつもお腹をさすって大丈夫よって声をかけていた。

自分の中に宿った命。
この感覚を味わいたくて三人の子供を産んでしまったようなものだ。
お金が許せばもう一人ぐらい欲しかった。
今では学費の工面で二人にしておけばよかったって思う時もあるけれど・・・。

女の子を産んだときこの痛みを味わうのかとかわいそうになった。
できる事ならかわってあげたいと・・・。
そして自分の誕生日は母への感謝の日だと気付かされ命をつないだことでなぜかほっとした。

女から母になることで怖いものはなくなる。
どんなことも受け入れる強さと潔さ、諦めさえも・・・。

子供さんを亡くした人は身を裂かれる思いだろう。
自分を責め続け守れなかったことを悔やむだろう。

少子化の覚悟というコラムを読んだことがある。
少子化とは一人で生きていく決心をする事だと。

もちろん子供は自立して親から離れていく。
一人という意味では同じかもしれない。
でもこの世に血のつながりがあるのとないのでは温度が違うような気がする。

生き物としてあたりまえのことがあたりまえでなくなってしまった世の中への願いを込めて。


「イルカ」 よしもとばなな 著