つぶやきまりりん

群れない 慣れない 頼らない (堀文子)

2016年09月

オーバー・フェンス

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函館の坂を憧れのオダギリジョーと一緒に自転車で下る。
テレビの番宣で満島くんの夢が叶った。
孤高の作家、佐藤泰志の函館最終章は豪華出演陣。
何度も芥川賞候補になりながら自ら命を絶った佐藤泰志はまさか三本も映画化されるなんて思ってもみなかっただろう。

舞台は職業訓練校。
年齢も学歴も職歴も様々でそれぞれの事情を抱えている。
暴力沙汰の後で大学を卒業して現場を知らない教官に年金をもらいながら訓練校に通う勝間田は言う。
「俺からオメエに教えてやるよ。学校の外にはな、オメエが思ってるより色んな人間いるんだ。それがわがってねえば、またおんなじ目にあうど。」
ソフトボール大会、青空に打球が吸い込まれていく。
壁を超えてフェンスを超えて飛んでいく。
最終章の「オーバー・フェンス」がハッピーエンドだったかどうかはわからないけれどこの先の希望は見いだせた気がした。

さらっと役者に言わせる言葉と、言いたいからこそセリフにできない言葉がある。
そんな言葉こそ感じたい。
現実の感情任せに吐き散らす蔑んだ言葉は恐怖でしかない。

怒り

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人は何に怒るんだろう。
ふつふつと湧き上がるその感情を自分の内に溜め込むのか、他人や物にあたるのか。
派遣会社のミスで炎天下歩き続けた男は麦茶を差し出してくれた主婦に殺意を向けた。
親切は時に見下されていると感じることもあるのか・・・。
そこに残された怒の血文字。
東京、千葉、沖縄で同時刻、テレビで放映されたモンタージュ写真。

役者魂を感じる骨太な映画だった。
重厚な音楽がずしんと心に響く。
主役も脇役もない。
信じることが出来なかった自分への慟哭。
自分を守るために罪を犯してしまった友人に張り裂けんばかりに叫ぶ。

心の中にゆるぎないものを持つ人は静かで優しくて強い。
その想いはきっと継がれていく。
孤独は不安と怒りしか生まない。

怒りを再読しよう。



五島のトラさん

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僕の名前は世文。
七番目に生まれたからセブンだけど僕はこの名前を気に入っている。
子供の頃から父親に誰よりも怒られ可愛がられてきた。
そして今日は父親の一周忌。
大切な日に僕は寝坊をしてしまった。
朝一番の島に渡る船は出港してしまったから法要には間に合わない。
今日も怒られるんだろうな。
一番怖い父親はもういないけれど・・・。
僕は父親が嫌いだった。
兄姉で父親が好きなヤツなんかいない。
でも年々父親の偉大さがわかってきた。
物心つくころから家業である製麺所の手伝いをしてきた。
嫌だと心ではみんな思っていた。
三歳の頃は時給は10円だった。
ちゃんとタイムカードもあって自分で押すのだ。
高校三年まで続けた僕は唯一大学に行かせてもらった。
だから兄姉には頭が上がらない。
それなのに一生の不覚だ。

父の名前はトラさんという。
子供たちにはもちろんだけど近所の子供も悪いことをすれば怒鳴りつけた。
聞けば僕のおじいさんもそうだったらしい。
でも真剣に子供と向き合っていることだけはわかる。
僕が教員になったのも父親のそんな姿を見てきたからだろう。
父親は毎日夜中の二時に起きてうどんをこねていた。
足で踏んで寝かし一人では出来ない作業になるとローテーションで五時に子供を起こす。
仕事は毎日一時間。
そして午後からは塩作り。
島の高校では野球部のコーチもしていた。
五島でうどんを作り始めたのも塩を作り始めたのもトラさんが元祖だ。
島で生きていくすべを子供たちにみっちり叩き込んだ。
そして島を出て行くすべも。
晩年のトラさんは糖尿病を患い誰の言うことも聞かずにうだうだと飲んだくれては転んでいた。
そのみっともないトラさんも孫にはトラちゃんと呼ばれていた。

僕は母親が大好きだ。
母はいつも僕の味方だった。
どんなときにも静かに黙々と働いていた。
父亡き後姉が製麺所をそして塩作りを義理の兄が継いだのも母のそんな姿を見ていたからだ。
父の築いてきたものを母が守りそして子供たちに孫たちに継がれていく。

僕は僕なりの五島のトラさんになろう。


追記
映画館でトラさんの塩と婿さんのあごんちょびを買った。
敬老の日に持っていこう。

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